「よけいなことを聞いて申し訳ございません」

 慌てて謝罪しようとすると、天佑によってそれは止められた。

「謝らないでくれ。言わなかった俺も悪い」

 天佑は困ったように笑う。その表情は、いつになく寂しげだ。
 そんな天佑を見て、玲燕は心臓がぎゅっとなるのを感じた。

「ところで、俺に持ってくるように頼んだその品々は一体何に使うんだ?」

 天佑は玲燕の横に置かれた布の包みを、視線でさす。
 玲燕はハッとして自分の脇に置いた布の包みを見る。

「こちらは、実験に使おうと思います」
「実験?」

 天佑は首を傾げる。

「はい。楽しみにしていてくださいませ」

 玲燕はそう言うと、口元に弧を描いた。


   ◇ ◇ ◇


 天佑が玲燕より、鬼火の謎が解けたので今夜来てほしいと言われたのはそれから一週間ほどしたある日のことだった。

「鈴々。玲燕は?」

 姿が見当たらず鈴々に尋ねると、鈴々は「あちらにいらっしゃいます」と殿舎の奥を指さす。部屋の中を覗くと、胡服姿の玲燕が灯籠の明かりを頼りに何かをいじくっているのが見えた。

「玲燕。約束通り、来たぞ」