一見するとただの少年だ。
 だが、初対面の自分に会った瞬間あれだけ言い当てられたその洞察力に、天佑は底知れぬ才能を感じた。だから、この少年にかけてみたいという気持ちが生まれた。

「表に看板が置いてあった。用件も聞かずに依頼を断るのは、あんまりなんじゃないか?」

 天佑は右手の親指で、玄関のほうを指さす。
 先ほど玄関脇に『お困りごとの解決、承ります』の札が立てかけてあったのは知っている。

「あんたは朝廷からの使いで、人捜しに来たんだろう? それについては、今言った通り、私では力になれない」
「人捜しはもういい。存在しない者を捜すのは時間の無駄だ。ところで、先ほどの推察はなかなか見事であった」

 静かに語りかける天佑を、少年は黙って見つめる。

「きみを見込んで依頼をしたい。改めて、私は朝廷の官史をしている甘《カン》|天佑(テンユウ)だ。実
は、都で近頃はびこっているあやかし事件を解決する知恵を貸して貰えないかと思ってね」
「あやかし事件?」
「ああ、そうだ」
「断ると言っただろう」
「は?」