「本当だわ。美しいわね」
池に模様を作り出す木の葉を見つめ、桃妃は口元を綻ばせた。
菊花殿へと戻った玲燕は、今さっき言葉を交わした桃妃のことを思い返しながら今日のことを紙にしたためた。
(まさに、佳人という言葉がよくお似合いの方ね)
少しだけ垂れた目元が可愛らしい、色白の美人だった。
以前、桃林殿で働く女官──翠蘭から聞いていたとおり、物腰が柔らかで優しそうだ。新入りの妃である玲燕にも気さくに話しかけ、接していて嫌なところは何もない。
「桃妃様もないかな……」
玲燕は小さな声で呟く。
「何が、『桃妃様もないかな』なのだ?」
ひとりきりだと思い込んでいたところで話しかけられ、玲燕は驚いた。顔を上げると、宦官姿の天佑がいる。
「天祐様! 驚きました」
「玲燕が昨晩、色々と用意してほしいと言っていただろう? どうせ今日は栄佑として一日過ごすから、持ってきた」
天佑は腕に抱えていた布の包みを、玲燕に差し出す。
「ありがとうございます。助かります」
玲燕はそれをありがたく受け取り、礼を言う。
「それで、何が『桃妃様もないかな』なのだ?」
池に模様を作り出す木の葉を見つめ、桃妃は口元を綻ばせた。
菊花殿へと戻った玲燕は、今さっき言葉を交わした桃妃のことを思い返しながら今日のことを紙にしたためた。
(まさに、佳人という言葉がよくお似合いの方ね)
少しだけ垂れた目元が可愛らしい、色白の美人だった。
以前、桃林殿で働く女官──翠蘭から聞いていたとおり、物腰が柔らかで優しそうだ。新入りの妃である玲燕にも気さくに話しかけ、接していて嫌なところは何もない。
「桃妃様もないかな……」
玲燕は小さな声で呟く。
「何が、『桃妃様もないかな』なのだ?」
ひとりきりだと思い込んでいたところで話しかけられ、玲燕は驚いた。顔を上げると、宦官姿の天佑がいる。
「天祐様! 驚きました」
「玲燕が昨晩、色々と用意してほしいと言っていただろう? どうせ今日は栄佑として一日過ごすから、持ってきた」
天佑は腕に抱えていた布の包みを、玲燕に差し出す。
「ありがとうございます。助かります」
玲燕はそれをありがたく受け取り、礼を言う。
「それで、何が『桃妃様もないかな』なのだ?」