「もしかして……」
「どうかしたのか?」
「はい。実際に実験してみなければわかりませんが、ゆらゆら漂う鬼火の謎について、解決の糸口を掴んだかもしれません」


   ◇ ◇ ◇


 初めて潤王の夜伽に召された翌日のこと。玲燕は鈴々を連れて後宮内の散歩に行くことにした。

「どちらに行かれますか?」

 鈴々が玲燕に尋ねる。

「たまにはいつもと違う庭園に行こうと思うの」

 玲燕は笑顔で答える。よく晴れており、絶好の散歩日和だ。



 菊花殿から歩いて十分。
 普段は行くことがない後宮の反対側は、とても美しい場所だった。

「とても素敵な庭園ね」

 ここ麗安城の後宮は、広い敷居に殿舎が点在する造りになっているが、敷地内には全部で六つの庭園がある。鈴々によると、それぞれが嗜好をこらした造りになっていて、とても美しいのだとか。

 玲燕は普段、菊花殿から一番近い庭園にしか訪れることがなかったので、少し離れたここにくるのは初めてだ。

(桃妃様は……いらっしゃらないか)

 玲燕は素早く周囲を見回す。

 この庭園は、桃林殿から近い。