これまでの調査からそこまでは絞り込める。けれど、最初に天佑が言ったとおり、そこから特定の誰かに絞り込むのが至難の業だ。なにせ、後宮に入れる身分がある者だけでも、女官や宦官、医官など合わせれば数百の家門が関わることになるのだから。
「錬金術師と懇意にしている貴族を中心に洗ったほうがいいかと思います。あの方法は、一般の方はあまり思いつかないと思うのです」
「ああ、わかった。実は俺も玲燕と同じことを考えて、錬金術師とゆかりのある貴族がどこなのかを調べている」
再び、ふたりの間が沈黙に包まれる。両側に広がる庭園からは虫の声が聞こえてきた。
「鈴虫でしょうか」
「この鳴き方は、そうだな」
天佑は回廊から庭園のほうを見る。玲燕も同じように、そちらに目を向けた。
「ずっと昔、両親が亡くなって泣いてばかりの私を慰めるために容が鈴虫を集めてプレゼントしてくれたことがありました」
「容?」
「私の育ての親です」
「なるほど」
天佑は頷く。
容は元々、玲燕の生家である葉家に仕える使用人だった女性だ。あの惨劇の日、混乱する玲燕を屋敷から連れ出し、その後は自分の娘として育ててくれた。
「錬金術師と懇意にしている貴族を中心に洗ったほうがいいかと思います。あの方法は、一般の方はあまり思いつかないと思うのです」
「ああ、わかった。実は俺も玲燕と同じことを考えて、錬金術師とゆかりのある貴族がどこなのかを調べている」
再び、ふたりの間が沈黙に包まれる。両側に広がる庭園からは虫の声が聞こえてきた。
「鈴虫でしょうか」
「この鳴き方は、そうだな」
天佑は回廊から庭園のほうを見る。玲燕も同じように、そちらに目を向けた。
「ずっと昔、両親が亡くなって泣いてばかりの私を慰めるために容が鈴虫を集めてプレゼントしてくれたことがありました」
「容?」
「私の育ての親です」
「なるほど」
天佑は頷く。
容は元々、玲燕の生家である葉家に仕える使用人だった女性だ。あの惨劇の日、混乱する玲燕を屋敷から連れ出し、その後は自分の娘として育ててくれた。