妃の中で最も位が高い皇后の地位は未だに空席。最初に皇子を身ごもった妃がこの座を射止めるであろうとされているが、懐妊の兆しが見える妃は今のところいない。そのため、妃達は一夜でも多く、夜伽に召されることを望んでいる。

 女の妬みは、ときに身を滅ぼすほどの恐ろしさを孕んでいる。
 全ての妃の元を平等に通うのは、四人を平等に扱っていると見せることで桃妃に対する恋情を隠し他の妃からの妬みから守った上で、通う回数を最大にする方法なのではないだろうか。潤王自身が否定も肯定もしないのが、何よりもの証拠に思えた。

 パチン、と碁石を置く音が鳴る。

「陛下の番でございます」

 玲燕は囲碁盤を視線でさす。潤王の視線も囲碁盤へと移動した。

「さすがにそう簡単には負けないか」
「当たり前です」

 玲燕はつんとした態度で答える。腕を組んで囲碁盤を見つめていた潤王は、おもむろに顔を上げた。

「ふむ。残念だが、時間切れかもしれない」
「時間切れ?」

 玲燕が怪訝な顔をしたそのとき、「英明様!」という声がしてバシンと背後の扉が開く。息を切らせて入ってきたのは天佑だった。

「あれ、天佑様?」