「ふうん。……そう言えば、先ほど礼部の雲流様が天佑様の体調を気遣っておられましたが、どうかされたのですか?」

 玲燕が知り合ってからの天佑は健康そのものだ。連日職場に泊まり込むほどの仕事ぶりは、病気とは無縁に見える。
 玲燕は不思議に思い、天佑に尋ねる。

「まあ、そうだな」

 天佑はふいっと玲燕から視線を逸らす。その様子におやっと思った。

(もしかして、今も体調が万全でない?)

 天佑は自分の過去を玲燕話したがない。
 心配になった玲燕は「もう体調は──」と口を開きかけるが、すぐにむぐっと言葉を詰まらせた。天佑に、先ほど切った胡麻餅を口に突っ込まれたのだ。

「ほら、食べろ。先ほどの茘枝の代わりだ」
「にゃにふぉふふほうぇしゅは!」
「ん?」

 天佑は首を傾げる。
 玲燕は口に入れられた餅をもぐもぐと咀嚼し、お茶と共にゴクンと飲み込んだ。

「何をするのですか!」
「茘枝に負けないくらい旨いだろう?」

 頬を膨らませる玲燕を見つめ、天佑はまた楽しげに笑ったのだった。


   ◇ ◇ ◇


 パチン、と碁石を置く小気味よい音が鳴る。