「角度計を使わずしてこの胡麻餅を喧嘩がないようにきっちりと三等分にせよと言われたら、どのように分ける?」

 玲燕は丸い胡麻餅をじっと見つめてから顔を上げ、男を見た。

「棒は三本ありますか?」
「これでよいか?」

 男は近くにあった竹ひごを三本、玲燕に手渡した。

「ありがとうございます。正確に切るならば、こうです」

 玲燕は二本の竹ひごを胡麻餅のちょうど中心辺りで直角に交差させるように置き、もう一本は餅の縁と中心のちょうど中間地点に、既に置かれた竹ひごの一本と平行になるように置く。そして、最後に置いた竹ひごと餅の縁が接する二点を指さした。

「この二点から中央に向かって切り、最後にこの鉛直に置かれた竹ひごに沿って中心まで切れば、綺麗な三等分です」

 天佑はそこからその胡麻餅を覗き込む。確かに玲燕の言うとおりに切れば、美しい三等分になる。

「ただ、この方法は道具──今で言うと竹ひごが必要で面倒なので、私ならやりませんね」
「ほう。では、どのように切る?」

 男は興味深げに玲燕に聞き返す。

「では、試しにあなた様が三分の一を切りとってみてください」

「こうか?」