玲燕は思わぬ申し出に目を輝かせる。
皿に載せられていたのは、胡麻餡がたっぷりと詰まった胡麻餅と乾燥した棗(なつめ)が二つだった。

「あ、でも……」

 玲燕は胡麻餅に伸ばしかけた手を引く。この胡麻餅と棗はそれなりの値が張る物のはずだ。ライチ一粒に対する礼としては、貰いすぎな気がする。

「なんだ、遠慮しているのか?」
「貰いすぎなのではないかと」
「遠慮するな。玲燕はおかしなところで気を使うのだな。先ほどは高氏にあれだけ堂々と言い返し、視線を送る女官に笑顔で会釈を返していたのに」
「高様の件は、ああ言わないとずっと話が続きそうだったではありませんか。それに、目が合ったら挨拶するのは、最低限の礼儀でございます」
「そのとおりだな。だから、私は話す必要がない人間とは目を合わせない。これからは、女官への挨拶役は全て玲燕に任せよう」

 天佑は愉快そうに笑う。
 どこかからかっているような様子に玲燕が言い返そうとしたそのとき、第三者の声が割り込んできた。

「これは、楽しそうだな。俺も混ぜてくれ」