「先ほど高様か仰っていた〝こちらの意見〟とはなんですか?」

 玲燕は尋ねる。先ほど礼部で出会った高宋平は、天佑に向かって『ついにこちらの意見に賛成してくれるということかな?』と言っていた。

「例の鬼火騒ぎを沈めるために、国家を挙げて大規模な祈祷を行うべきだと主張している」
「ああ、なるほど……」

 玲燕は肩を竦める。
 鬼火があやかしの仕業であるならば、祈祷で沈めるほかない。
そして、もしも祈祷をするならば、取り仕切るのは礼部の役目だ。

 実際には鬼火はあやかしの仕業ではないが、犯人捜しをするためにそれは公にはされていない。
 高宗平はきっと、あの鬼火はあやかしの仕業であると信じているのだろう。

(高様としては、皇帝陛下を心配してそのような進言をしているのかもしれないわね) 

 けれど天佑からすると、それを認めると『潤王が皇帝として相応しくないと天帝が怒っている』という噂話を天佑も信じていると周囲から捉えかねられない。なので、同意するわけにはいかないのだろう。

 ちょうどそのとき、部屋の扉をノックする音がした。

「失礼いたします。軽食の甘味をお持ちしました」