「ちょっと、都の錬金術師では手に負えないことがあってね。優秀な錬金術師を探しているんだ。特に、この辺りは昔から優秀な錬金術師を多く輩出している地域だしね。かつて天嶮学(てんけんがく)の系統をなす錬金術師を編み出したのもこの地だ」

 今から百年ほど前、とある錬金術師が人々が考えもつかない方法で難題を次々と解決し、ときの皇帝から〝天に類するものがない知識をもつ者〟という意味の『天嶮(てんけん)学士(がくし)』の名を賜った。
 以来、彼の錬金術の流派は『天嶮学』と呼ばれ、その弟子へと知識が受け継がれていると言われている。

 少年は天佑の言葉に驚いたように瞠目し、次いで肩を揺らして笑い始める。

「これは笑わせる」
「何がおかしい?」

 真面目な話をしているのに突然馬鹿にしたように笑われて、天佑はむっとして問い返す。少年はなおも腹を抱えながら、天佑を見据えた。

「その名を再び耳にする日が来るとは思わなかった。天嶮学はまがいもの故、『天嶮学士』の称号ごと剥奪したのでは?」

 少年は涼やかな目で天佑を見る。
 まるで挑むような態度に、天佑は押し黙る。

 少年の言うとおりだった。