秋は実りの季節だ。

 収穫しておいた穀物を唐箕(とうみ)に入れて空気を送ると、排気口からは勢いよくもみ殻だけが吹き出した。あっという間に、唐箕のそばにもみ殻の山ができあがってゆく。

「こんなもんでいいかな」

 作業を終えた葉(ヨウ)玲燕(レイエン)は、今仕分けたばかりの穀物を麻袋に詰め、それを持ち上げる。
 まだ十歳の玲燕は体が小さい。袋を持つと、両手がいっぱいになった。

 玲燕は転ばないように注意しながら、よろよろと屋敷の裏へと向かう。

「容(よう)。終わったわよ」
「まあ、お嬢様。もう終わったのですか? ありがとうございます」

 芋を仕分けていた使用人の女性──容は、人のよい笑みを浮かべる。

「それにしても、お嬢様が作ったあの機械はすごいですねえ。」
「唐箕よ」
「そうそう、唐箕」

 容はあははっと笑うと、玲燕が手渡した麻の布袋を開ける。

「突然木を組み立てて何を作るかと思えばあんなもん作っちゃうんだから、たいしたもんですねえ。さすがは旦那様のお嬢様です」