「お母さん、おかえり」
「あ、十和、ただいま」
「あのさっ、急なんだけど……えーっと、前に心臓のことぜんぜん気にしてないって言ったじゃん。平気だよーって」
「えっ、あぁ、そうね」
「とりあいず、リビング行こ」

お母さんは、不思議そうな顔をした。リビングにつき、片付けが終わったお母さんを確認してから、私はすうっと深呼吸をする。

「……本当はね、前までちょっと気にしてたの。いや、たくさんかも。ただ―――」

絆さん、私、言えた。ちゃんと、吐けた。
飲み込んでいた言葉。息。

「……そうよね。そうじゃないわけ、ないよね」
「……うん」
「十和、がんばったね」

あらためて言われると、くすぐったい。それをが嫌だったのかもしれない。これを聞きたくなかったのかもしれない。だから、ずっと隠してきたのだと思う。ひとりで何とかなると思って。

「友達にも言ってなかったの。……でも、言ってもいいかなって今は思う」

はじめからひとりじゃないかった。(生き)ずらかった。それはたしかに、そうだったけれど。
それでも私は、生きたい。
私に生きてほしいって人が、いる限り。
たとえいなくなってしまったとしても、絆さんのために。
生きたい。

 司書(きずな)さんへ

 罪悪感が消えることは、この先もきっとないと思います。でも、それでも生きれるんですね。おかげでそう思えるようになりました。
 それから、この手紙の合言葉について、「I」を「O」に変えるのもいいと思ったのですけど、私達の場合は「A」を頭につけるのもいいなと思いました。「ALIVE」って、be動詞のあとでしか使えないらしいです。だから私達は、「ARE」ですね。今までは、私が勝手に「AM」にしていたけれど。私って、ひとりじゃないんですね。ちなみに、LIVEとARIVEは同じ「生きる」という意味なんですよ。って、司書さんなんだからそれくらいは知ってますか。
 絆さんが司書をやめたあと、図書室の郵便制度はなくなりました。そういえば、一番最後の手紙の合言葉は「A」なんですよ。この手紙です。司書さんの役目、果たしてくださいね。いつかちゃんと届けて、読んでください。はずかしいので、私が寝ているときにでもお願いします。胸の内に、しまっておいて下さい、
 長くなってしまいましたが、私が言いたかったことは、とりあいず、ありがとうございますってことです。ありがとうございました。



どこにいても、何をしていても、いつもどこか息苦しい――こんな自分のことが大嫌いだった。
――だけど。

少しだけ息がしやすくなった気がした。