「佐保、久しぶり!」
「すず、ごめんね。寒いのに呼び出したりして」
「ううん! 私も佐保に会いたかったし、たまには息抜きしたいなって思ってたから」
年が明けてもうすぐ冬休みが終わるころ、私は佐保に呼び出されて近くの神社に初詣に来ていた。
三が日もとうに過ぎたために神社は閑散としており、私たちのほかには人気はない。
まるで貸切のように合格祈願のお参りをして、おみくじを引き、おそろいのお守りを買ってから境内を後にする。
赤い色をした学業成就のお守りを大切にカバンにしまっていると、ふいに佐保が足を止めたのが分かった。
「すず、少し痩せた?」
「えっ?」
思いも寄らない問いに声が詰まり、私はおもむろにコートの袖を上げて手首を出した。
言われてみれば確かに、以前より腕が細くなっているかもしれない。
佐保は他人の変化をすぐに感じ取れる子だから、彼女が言うならきっとそうなのだろう。
「うーん、そうかも。体重なんて量ってないからよく分かんないけど」
「それって受験勉強が大変だから?」
「かなぁ? 最近成績がぜんぜん上がらなくて悩んでてさぁ」
おどけた調子で言ったものの、私の言葉に佐保は顔を歪めてしまった。
まずい、対応を間違えてしまったと、慌てて手を振って弁解する。
「でも私、絶対に佐保と同じ高校に合格してみせるから!」
「そんな。無理しないで、自分の体調を最優先にしてよ。すずはもともと近場の高校に行きたいって言ってたし、今の志望校は私と合わせてくれただけでしょう……?」
「確かに最初は佐保に合わせて選んだけど、今は本当に行きたいって思ってるよ」
しかし何度取り繕っても、佐保の顔はどんどんと下がっていった。
彼女の旋毛が頼りなく私の方へと向く。
はなを啜る音は寒さではなく、涙を耐えているのだろう。
なんだかおかしい。佐保の様子が変だ。
彼女はいつも控えめだけれど、こんなふうに弱々しく俯いたりなんかしない。
「佐保こそ何かあったんじゃないの?」
佐保の両肩を掴んで問うも、彼女は顔を下げたまま頑なに首を横に振った。
「私は何もないよ」
「そんなの嘘だって分かるに決まってるじゃん。ねぇ、それって私には言えないこと?」
我ながら良心につけ込むようなずるい聞き方だと思う。
けれどこうでもしなければ佐保が本心を打ち明けてくれることはないと分かっていたのだ。
俯いたまま、ためらいがちに迷った末、ようやく佐保が顔を上げる。
その目は真っ赤になって涙を浮かべていた。
「実は、あんまり家にいたくなくて」
「……お父さんたちと上手くやれてないの?」
私の問いに、佐保が浅く頷く。
佐保の家はずっと、母一人子一人の母子家庭だった。
しかしこの夏にお母さんが再婚し、彼女には突然新しいお父さんと妹ができたのだ。
私も何度か挨拶をしたことがあるけれど、お父さんは優しそうな人で、妹もかわいくていい子そうな印象があった。
だからこそ、私は佐保に新しい家族ができたことを喜ばしく思っていたのだけれど。
「すず、ごめんね。寒いのに呼び出したりして」
「ううん! 私も佐保に会いたかったし、たまには息抜きしたいなって思ってたから」
年が明けてもうすぐ冬休みが終わるころ、私は佐保に呼び出されて近くの神社に初詣に来ていた。
三が日もとうに過ぎたために神社は閑散としており、私たちのほかには人気はない。
まるで貸切のように合格祈願のお参りをして、おみくじを引き、おそろいのお守りを買ってから境内を後にする。
赤い色をした学業成就のお守りを大切にカバンにしまっていると、ふいに佐保が足を止めたのが分かった。
「すず、少し痩せた?」
「えっ?」
思いも寄らない問いに声が詰まり、私はおもむろにコートの袖を上げて手首を出した。
言われてみれば確かに、以前より腕が細くなっているかもしれない。
佐保は他人の変化をすぐに感じ取れる子だから、彼女が言うならきっとそうなのだろう。
「うーん、そうかも。体重なんて量ってないからよく分かんないけど」
「それって受験勉強が大変だから?」
「かなぁ? 最近成績がぜんぜん上がらなくて悩んでてさぁ」
おどけた調子で言ったものの、私の言葉に佐保は顔を歪めてしまった。
まずい、対応を間違えてしまったと、慌てて手を振って弁解する。
「でも私、絶対に佐保と同じ高校に合格してみせるから!」
「そんな。無理しないで、自分の体調を最優先にしてよ。すずはもともと近場の高校に行きたいって言ってたし、今の志望校は私と合わせてくれただけでしょう……?」
「確かに最初は佐保に合わせて選んだけど、今は本当に行きたいって思ってるよ」
しかし何度取り繕っても、佐保の顔はどんどんと下がっていった。
彼女の旋毛が頼りなく私の方へと向く。
はなを啜る音は寒さではなく、涙を耐えているのだろう。
なんだかおかしい。佐保の様子が変だ。
彼女はいつも控えめだけれど、こんなふうに弱々しく俯いたりなんかしない。
「佐保こそ何かあったんじゃないの?」
佐保の両肩を掴んで問うも、彼女は顔を下げたまま頑なに首を横に振った。
「私は何もないよ」
「そんなの嘘だって分かるに決まってるじゃん。ねぇ、それって私には言えないこと?」
我ながら良心につけ込むようなずるい聞き方だと思う。
けれどこうでもしなければ佐保が本心を打ち明けてくれることはないと分かっていたのだ。
俯いたまま、ためらいがちに迷った末、ようやく佐保が顔を上げる。
その目は真っ赤になって涙を浮かべていた。
「実は、あんまり家にいたくなくて」
「……お父さんたちと上手くやれてないの?」
私の問いに、佐保が浅く頷く。
佐保の家はずっと、母一人子一人の母子家庭だった。
しかしこの夏にお母さんが再婚し、彼女には突然新しいお父さんと妹ができたのだ。
私も何度か挨拶をしたことがあるけれど、お父さんは優しそうな人で、妹もかわいくていい子そうな印象があった。
だからこそ、私は佐保に新しい家族ができたことを喜ばしく思っていたのだけれど。