「構わない」

「構ってよ」

お願いだから。

今だけは、恋人でいさせてほしい。

世界。

誰にもゆるされなくていいから。……今だけは、まどろみのような時間がほしい。

今だけは、これほど近くにあることを、ゆるしてほしい。

「それから……これだけは、俺の中での絶対があるんだ」

「……絶対?」

「咲桜の父親は、在義さん。母親は、桃子さん。……それだけは、今も欠片も揺らいでいない」

「……――――」

「まあ、朝間先生が咲桜の母になることはあるかもしれないけど? それは在義さん次第かな」

流夜くんが言うと、ふっと目じりを和んだ。

「…………だったら、嬉しい」


+++


ぐー。

「……う」

「腹減ったのか?」

「ごめんなさい……こんなときに」

「こんなときだからメシ食ってなかったんだろ。お前すごく軽くなってるぞ」

「……ごめんなさい」

「少し横になってろ。倒れたら困る」

「なんで?」

「メシ作るから」

「わ、私も作るっ」

「……少しくらいは出来る」

「じゃなくてっ。~~いいから」

渋る流夜くんの背中を押して、キッチンへ向かう。

――今夜が、恋人としてのリミットだ。

だからせめて、そのぎりぎりまでは傍らにいたい。

もう望めなくなるかもしれないから。