いつの間にか、私が見上げる流夜くんも泣いていた。
「咲桜はきっと、俺が望んだ唯一だから。俺の幸せの象徴みたいなものだから……頼むから、死ぬことだけは望まないでくれ。……選ばないでくれ」
流夜くんの、お願い。
もしかして、それ、だったの……?
「咲桜。もっと近くにいてもいいか?」
触れるとき、何度か確認されたことがあった。決まって私が優しい気持ちでいるときだ。私が怒っているときは無理矢理にでも抱き寄せるくせに。
「……うん」
……ずるいね。
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「俺がさ、学生時代にどういう風に女性と付き合ってたか、知ってるんだろ?」
何度も寄り添ったソファで、隣りあわせで座っている。流夜くんの左腕が私の肩に廻り、右手は私の両手を包んでいた。
「……うん」
「それ知られたら、嫌われると思ってた」
「……どうして?」
「嫌いだろ? 咲桜。そういう、女性を無下にする奴」
「………嫌いだけど、流夜くんは嫌いじゃないから、特別枠でゆるす」
「俺もなんだ」
「え……?」
「俺も、咲桜は特別。自分から誰かを望んだのは咲桜だけだった。傍にいてほしいとか、いたいとか、そういう気持ち」
「………」
「だからな、咲桜……。俺たちはもう、桃子さんをゆるしてあげよう」