これ以上ないくらい低い声。

……びっくり、させちゃったかな。怒らせたかな。でも、もういいの、嫌われても。ううん、嫌われた方が、いいの。

「私は、流夜くんに殺されるべきだと思う」

「そんなわけあるか!」

「あるよ!」

抑揚のなかった声が張り上げられる。

流夜くんに両手を握られていて、顔も覆うことは出来ない。

どれほど泣いても尽きない涙は、こんなところまで追いかけて来たと言わんばかりに、私の視界が歪んでいく。

「あるよ……おねがい……」

「いやだ」

「なんで……」

「俺が咲桜を失いたくないからだ」

流夜くんが、握った私の手をそっと合わせる。流夜くんの手で包まれると、余計涙がこぼれた。

「……俺も考えた。咲桜と一緒に死のう、って」

その言葉に、息を呑んだ。

もしそう乞われていたら、私が選ぶ答えは一つだ。

「………なんで、そうしないの……わたし、いっしょにいくよ……流夜くんといっしょだったら、しんだっていいよ……」

「そう言ってくれるってわかったからだ」

流夜くんは片手を離して、私の頬に当てる。辛そうに、その顔が歪められる。

「でも、死んだって一緒にはいられない」

「………っ」

「一緒にはなれない。俺は、咲桜を失えなかった」

「……失うって……」

「どう足掻いても、なにが枷でも、咲桜だけは……ごめん、死なせたくない」