「流夜くん、咲桜が貧血で倒れたって聞いたら蒼い顔になっちゃって、尊さんが驚いてたよ。流夜くんの無表情以外のカオ、初めて見たって」

「………ほんと流夜くんってどんな学生だったんだろ」

踏み込んでいいのか、ものすごく迷うところだ。

「今、尊さん呼んでくるね。咲桜が起きたら呼んでって言われてるから」

「あ、うん」

「待っててね。あ、あと在義パパもこっち来るって連絡あったよ。事件になりそうで、咲桜も関係者になるから、現状把握も兼ねて迎えに来てくれるって」

「……迷惑かけちゃうなあ」

「そんなことないって。咲桜がしたのは人命救助なんだから。咲桜にしか出来ない、さ」

横になっててね、と残して笑満は病室を出た。

ふーと長く息を吐く。なんか……状況に頭がついていけていない。

あの女性が助かったことだけ、よかった。

少し頭が重くて、言われた通りベッドに横になる。

病室、というより救急の処置室のような部屋だった。

「………」

流夜くんもボンベイタイプだったのは初耳だ。でもそれで一人の命が助かったんだ。

自分たちが珍しい血液型だった、意味があったのだろう。

「………」

いいこと、だったはずなのになんだかだるい。貧血の所為だろうか。

まさか自分まで輸血が必要なんてことになったら申し訳ないと思い、瞼を閉じた。

少しでも休んで回復しないと。

声? 目を閉じて聴覚しか働いていない所為か、遠いところの声が聞こえる。

意識が夢に落ちそうになりながら、現実とも繋がれていて、まどろむように目を閉じていた。