+++
瞼が重い。目を覚ますのが億劫だ。
そんなだるい思考に響く声に呼ばれるように、意識は覚醒させられていく。
「――お、さお」
控えめだけど、しっかりと呼ぶ声。いつだって私を待っている声。
「ぅ…………ぇみ……?」
「あ、よかったあ、目ぇ覚めた?」
「……ここ……?」
真正面に見えるのは見たことのない……天井? 何度も瞬く。
「病院だよ。輸血用に血を取ったら、咲桜が貧血で倒れちゃったの」
笑満の手を借りて上体を起こす。
「ゆけつ……あっ! さっきの人は⁉」
「大丈夫だよ。咲桜と先生の血をもらって緊急オペ入ったんだけど、成功したって。意識はあるって聞いたよ」
「そ、そっかあ……よかったあ」
「すごい偶然だよね。たまたま居合わせた咲桜が同じ血液型だったってさ。日本には五十人もいないんでしょ」
「そう言われてるみたいだね。日本って島国なのも相まって。……ねえ、さっきのって、事件?」
「そう、みたい……でも、さっきの人――ミナさんとは面識ない人みたいだよ。お友達が知ってる限りでは。通り魔的犯行、ってやつみたい」
「……そっか。命が無事なら、よかった」
「ね。咲桜もがんばった」
えらいえらい、と笑満が私の頭を撫でる。
「でもほんと偶然だよね。せんせ――流夜くんも、咲桜と同じ血液型なんてさ」
「………そうなの?」
「あ、知らなかった? 尊さんが言ってた心当たりって流夜くんなんだって。すぐ駆けつけてくれたよ。さっきまで流夜くんもここにいたんだけど、遙音くんが刑事さんたちと一緒にこっち来て、流夜くんもそっちの方で話してる」
「………」
それはまた偶然。