「ミナ……」

小さな声が聞こえて、やっと私はその女性に気づいた。

腰を抜かしてしまったように蒼い顔で座り込んでいる女性が、揺れる瞳で私の腕に支えられる女性を見ている。

「あなた、お友達ですか?」

尊さんが処置の腕を止めずに訊ねる。

「はい……ミナ、大丈夫なんですか?」

「わたしは医者です。できることは全部します。出血が多いですね……彼女の血液型、わかりますか? 病院で輸血の準備をしてもらわないと」

「は、はい……でも、ミナって……ボン……なんとかタイプって……」

瞬間、尊さんの手が停まった。

「もしかして……ボンベイタイプ?」

「そ、それです」

「………」

返事を聞いて、尊さんは悔しそうに顔を歪めた。

ボンベイタイプ――百万人に一人の割合の、珍しい血液型だ。

当然、輸血のストックも病院によってはないところもあるほどと聞く。

尊さんの表情の意味がわかった私は、すぐさま答えた。

「私から取ってください。私もボンベイタイプです」

尊さんが驚いたように顔を跳ね上げた。

「本当?」

「はい。今までも、輸血用に提供したことがあります。少しくらい多くとってもらっても構いません」

「――わかりました。感謝します。では、咲桜さんと――笑満さんも、病院へ同行してもらえますか? わたしも一人、タイプの心当たりがあるので、来るよう連絡しますので」

『はい』