『……うん』

「うん?」

『……反対、された』

「え……もしかして、遙音先輩?」

五秒ほど間があって、笑満は小さく肯定した。

「やっぱり――前にあった、こと?」

『事件』とはっきり口にするのははばかられて、ぼかした訊き方になった。

しかし、笑満は違うと否定した。

『遙音くん、は、あたしのお婿さんでいいんだって』

「どこまで認められてるの⁉」

まさかの婿確定。いや、笑満の嫁確定? 私の笑満がもうお嫁に……!

『そのくらい、認められてるの。……遙音くんと付き合うのは、いいし、うちに来てもっらっても、いい。でも……遙音くんが、警察の世界に関わるのは、認められない、て……』

あ――。

思わず息を呑んだ。それこそ、吐きかけていた分まるっと。

……笑満の両親は、笑満の家庭は、事件や殺人などとは関わりのない普通の家庭。

警察官である在義父さんの娘である私と友人であるということくらいしか繋がらない。

……そこを、否定されたか。

「それで……遙音先輩がやめるまで、逢うなとか言われたの?」

『……ううん。そういうのとは、違った。遙音くんは、いい。でも、そういうのをするのは、やめなさいって……』

「………」

やめなさい、か……。顎を引いて視線を落とした。

――これが、笑満と自分の明白な違いだ。

『反対、されたのは遙音くんじゃなくて、遙音くんの、進路。……警察じゃなくて学問の世界だって言ったら、お父さんが「学問が現実に及ぼす影響をわかってないだろう」て言われた』

「………」

うーん、なかなか厳しい……。