「わあ! ごめんなさい!」
え? と私は驚いて振り返った。
何かがぶつかる衝撃とともに声が聞こえたから。
「あ、大丈夫ですか?」
事態に気づいて、慌てて言った。
大分小柄な少女が私にぶつかったみたい。
「すみませんっ、わたしの前方不注意で!」
小柄な少女は何度も頭を下げる。
「いえ、怪我はないですか?」
「はいっ」
少女は元気よく返事をした。
その明るい様子に、私も少し明るい気持ちになった。
冬休みに入った今日は、東京へ出てきている。
流夜くんに堂々と逢えないことでテンションが低い私心配してくれた笑満が、気分転換に出かけようよ! と連れだしてくれた。
ついでに、流夜くんへのクリスマスプレゼントとか探そうよ! と。
遙音先輩も一緒に来ている。
一度別行動にして、私はただいま、待ち合わせによく使われる場所で二人を待っているところだった。
まあ、あちらも恋仲ですし? 少しは二人っきりにしないとだよね。
流夜くんと想いが同じであることがわかって不安は薄くなったけど、流夜くんに本気で告白を考える生徒がいるのを見聞きして、うー、やっぱりー、というモヤモヤした気持ちにならずにはいられなかった。
流夜くんがカッコいいのを知っているのは自分だけだったらいいのに、なんて詮無い独占欲が頭をもたげるのだ。
しょうもないなあ、自分。
「尊(みこと)―。あ、お前急にいなくなるなよ」
その声に反応したのは、小柄な少女だった。
「衛(まもる)くん。ごめん見失ってた~」
少女を追って来たのは、流夜くんと同年代くらいの青年だった。
生真面目そうな面差しが第一印象だった。妹さんかなあ。
「あれ? そちらは……」
青年が、私を見て首を傾げた。
みことと呼ばれた少女が慌てて手を振る。