……その言葉は嬉しいけど、いかんせん、流夜くんがカッコいいのは本当なんだ。
元々見せていた優しい性格で、一部の生徒からは好意的に見られていた。
悔しいけど、優しいのも本当だ。
今はわざと冷たくあたっているけど――それだけで、流夜くんに興味を持った人たちが引くとは思えない。
「やっぱツラ見せんじゃなかった……。桜庭のことがばれても隠し通せばよかった……」
ばれてもと言っても、流夜くんの履歴書に嘘はないから、他の先生たちが気付かなかっただけみたいなんだけど。
「……今、訊いてもいい?」
「なんだ?」
「警察の人には……ならないの?」
「今んとこなる気はない。絶対になりたくないわけじゃなけど、警察には吹雪がいるし、探偵の立場には降渡がいる。龍さんの後継には十分だろう。今更俺がそっちに首突っ込むことはない」
「じゃあ……」
「咲桜」
流夜くんが顔をあげて、私の唇に指を置いた。強制的に黙らされて息を呑む。
またそうやって恥ずかしいことをさらっと……。
「……たぶんこれかも、こういう面倒事に巻き込まれると思う。その度に咲桜に辛い思いをさせるかもしれない。……それでも、いいか?」
「………」
「俺の恋人で、いてくれるか?」
「うん」
答えることに迷いはない。流夜くんだから、肯ける。
重なる影の中に、満たされていく幸せ。
もうどうしたって、手放せない。
最愛の人になってしまったんだよ。
「絶対俺が護るから」