「どうするか……夢だったら醒めたくない……目が覚めたら咲桜がいないとか……」

ほ、本気で悩んでいる。

腕を伸ばした。ぎゅっと、流夜くんの首に廻して抱き付く。

「さ、お……?」

「私だよ。幻でも夢でもない。……ちゃんといるよ」

言葉にすると、抱きしめ返された。

「ああ……咲桜だ」

きつく抱きしめ合い、存在を確認する。

流夜くんだ。

咲桜だ。

本当に、腕の中にいる。

「ありがとう」

「うん……」

流夜くんの腕が緩んだので、少しだけ身体を離した。すると、次の瞬間には抱き上げられていた。姫抱っこ。

「わっ、流夜くんっ?」

「もう少し、傍にいさせてくれ」

にっと笑みを見せた流夜くん。何度も見ているカオにドキッとした。

傍にいる、それは同じ空間に、ではなく触れ合える距離という意味だと、さすがにわかっている。
 
流夜くんはローソファに私をおろして、自分も隣に座った。そのまま抱き寄せて、肩口に額を押し付ける。

「……お疲れ様」

「本当に疲れた……降渡と吹雪、呪う」

素顔をさらす羽目になったこと、相当後悔しているようだ。

「でも……やっぱり流夜くんってカッコいいんだよね」

流夜くんの背中と頭それぞれに手を廻し、ポンポン叩く。甘えてくる流夜くんが可愛くて仕方ない。

「そんなの、咲桜だけ思っていてくれればいい」