「これ?」

「部活。こんなんなっちまったから、入部希望が来たら咲桜も困るだろ? 先生も。勝手に作っといて悪いけど、今日限りで廃部申請しとく」

「………」

相変わらず私や笑満の考えつかないところまで先読みする頼だった。

「……うん」

私は微かに肯いた。

確かに流夜くんへの迷惑を考えると、流夜くんへ近づく道は残して置かない方がいいだろう。

……流夜くんに繋がる糸がどんどん薄らいで切れていく。

このまま……なんてことはないよね?

不安のかたちが、今までと違っていた。





なんというか、我慢も限界。

その日、私は流夜くんのアパートを訪れていた。

うちで半同居状態だったのだが、学校で素顔がばれたことを警戒した流夜くんは、この一週間うちには寄ることはなかった。

旧館へも来ないよう言われた。

学校では衆目の人となってしまい、部活も解散した今、流夜くんに逢える場所がなかった。

……お弁当も渡せていないから、食生活が心配でもある。

私に一つ残されたのは、桜のストラップのついた鍵だった。

まさかだけど、アパートまで押しかける生徒もいるかもしれない。

危険があることは承知だ。それでも今日は逢いたかった。

いつか頼に言った言葉が甦る。

何かあったら――流夜くんが学校を辞めさせられそうな事態になったら、自分も辞める。今は定時制も通信制もある。頼や笑満とは学校が離れたぐらいで切れる縁ではない。

私は、大丈夫だった。

だから――逢いたかった。なにをおいても。