翌日から、流夜くんは――『神宮先生』は変わっていた。

まず、笑わなくなった。

微笑まなくなった、とも言うだろうか。

穏やか、和やかな雰囲気が一切取り払われた。

一度瞳にしてしまったメガネのない美麗な容姿は、好奇心の強い私たち年代には十分な刺激だった。

生徒たちは朝から流夜くんに張り付いて、私なんて近づく余地はなかった。そんな中でも、

「先生―、彼女いますかー?」

そう訊かれれば、

「いますよ」

流夜くんははぐらかさずにはっきり答えた。

「正式に婚約している方なので別れたりしません。ご心配なく」

……一切笑みのない表情で堂々と宣言して、学校中をざわめかせたりもしていた。





「いじけ顔ねー、咲桜」

今日も寝ている頼の机に集まっている私たちは、昨日素顔を露わにされた流夜くんの話に花を咲かすクラスメイトを眺めながらひそひそ会話する。

「だって……やっぱり素顔見せたら、すきになっちゃう人いるじゃん……」

私は不機嫌を隠せない。

昨日家に帰ってから、流夜くんから連絡があった。

しばらくは用心のためにアパートの方へ帰ると言うことだった。

私は大丈夫だと食い下がったけど、今回は大丈夫じゃないと押し切られてしまった。

「まー、咲桜は冷たい流夜くんも優しい流夜くんも独り占め出来るんだから。あの子たちだってずっとは騒いでないよ。一過性のもの。落ち着いたらまた二人っきりになれるって」

「………」

それでも、在義父さんの公認の仲だったから今まで簡単に逢えていた分、逢えないことの辛さを実感する。

「んー、でもこれは廃部にしといた方がいいなー」

と、それまで突っ伏していた頼が顔をあげた。