「ああいう組織だったものは向いていないんです。無所属(フリー)で動いている方がやりやすい。ですので、別に警察に関わる方面で報酬だのは発生させていません。学校に危害が及ぶ真似もしていません。――ですが、問題になるかもしれないことは承知しています。職を辞せというのなら、すぐにでも書きます」

教師連中は驚いているが、俺は本気で言っている。

咲桜のことがあったときもそうだけど、もう遙音をここに一人にしても大丈夫そうだから、俺が教職に執着する理由はもうない。

……人畜無害そうに見えていた『神宮先生』は、こんな人だったのか、とでも言いたいのか、抜けた顔をする奴もいる。

俺への問いは、校長に丸投げされた雰囲気になる。

「……今年度いっぱいで辞められることは、間違いないんですね?」

「はい」

今年度まで、と、上司には早々に届けてある。

「神宮先生、桜宮学園からも誘いがありましたよね? それも関係しているんですか?」

「誘いをかけてきた蒼――元Pクラス生の神林蒼教諭は、学生時代の知り合いです。その頃から俺がやっていることは知っています。ですが、元から桜学に行くつもりはありません」

「あの神林先生ですか。……知った上で、教師として、ですか」

「苦労性ですから、蒼は」

蒼の性格を一言で片づけた。

校長は額を抑えた。

「正直……前例がなさ過ぎて処分がわかりません」

「そうですか。では第一例としてください」

「……神宮先生、性格違いすぎませんか?」

「当たり障りなくやっていたつもりではあります」

「………」

校長の、額を抑えていた手が、頭を抱える役割に変わった。

「……すぐに処分は下せません。事情はわからないことばかりです。ですが、今日のように警察やその委託を受けた人が、学内に入るのは好ましくありません。今後、そのようなことはないよう気を付けてください」

「はい。その点は、反省しております。申し訳ありませんでした」