「もう無理だよ。ってか先生方、この二人見て思い出しません? あと一人、いたでしょう?」
宮寺は挑発的な言い方をする。
「神宮、これ以上は俺たちもかばえない」
……かばえない、か。
決定的な一言に、メガネを外すことで答えた。そして前髪を軽く払う。いつか日義に見せたときのように。
学校では悪目立ちしないように当たり障りなくやっていたけど、ここまでやられたらそれも無意味だろう。
「これで?」
自分としては、いつも通りの声。周りには冷えた声に聞こえるらしい。
素顔を見せた俺に、吹雪は満足げだった。
降渡はそこまでは要求する気はなかったのか、あららーとぼやいている。
温度のない喋り方に、廊下の生徒は驚きのために一瞬間を置いて信じられないといった反応をした。
「神宮――りゅうや、くん?」
呟いたのは海彦教頭だった。
そして俺が瞳を向けると、はっとした顔になる。
「教頭先生? 知って……るんですか?」
知ってるも何も同僚なのだろうが。
その顔色をなくした声に、海彦教頭の強張ったものを感じる。
「……桜庭の………」
続いた言葉は、周りが勝手に俺たちを呼んでいる呼称だった。
『悪夢の三人』
「神宮――先生。本当に、あなたなんですか? ……」
問われて、いつもの態度で答える。
ただ、学校での『いつも』ではないから、違和感を覚えるんだろう。
「周りがどう呼んでいたかは知りませんが、そこの二人と同期だったのは本当です。出身も桜庭です」
「本当――なんですか……」
「……わかっていただけました?」