「うるさい! なにしに来たんだお前ら!」
「いきなりひでーなー」
「学校には関わらないと言っただろう、お前たち」
「それがちょっと事情は変わっちゃってねえ」
吹雪さんは相変わらずにこやかに言葉する。
ちょうどそこへ、騒ぎを聞きつけた学年主任がやってきた。
「神宮先生! なにごとですかっ? 今飛び降りたって生徒が駆けこんできましたよ!」
息を切らせている学年主任を見て、吹雪がぷっと吹き出した。しまった。俺たちには二、三階程度からの飛び降りもどうってことないが、一般的に考えれば危険行為なんだった。
急に、吹雪が背筋を正す。
「突然申し訳ありません。上総警察署の春芽です。神宮流夜のことで、学校側にお話があって来ました」
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降渡と吹雪、そしてその二人が呼び出した俺が、応接室に呼ばれた。
もう放課後だったので、暇な生徒も部活がある生徒も突然のことに廊下に群れをなしていた。
教師たちが追い払おうとするが、全く効果がない。
教師自身も二人に好奇心があるのを隠せていない。
「はじめまして――では、ない方もいらっしゃいますよね。元桜庭生の春芽吹雪です。こっちは雲居降渡。今は探偵やってます」
吹雪は泰然と構えている。
あまりに堂々としているので、藤城の教師の方が若干喰われ気味だ。
「桜庭の――」
口にしたのは教務主任の年輩の教師だった。
「ええ。お久しぶりです、稲葉(いなば)先生」
吹雪は変わらず妖艶とすら言える笑顔を見せている。稲葉先生は驚いたように息を呑んだ。
「教頭先生も――憶えていらっしゃいますか?」
「……ええ。君たちのことは、忘れるわけがありません」
神妙な顔で肯く海彦(うみひこ)教頭。