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昨日から流夜くんのところへいること、夜々さんへの謀(たばか)りを案じてくれたのは笑満だったらしい。
礼を言わねば。
補講の準備をしても余裕のある時間に、流夜くんは華取の家に送り届けてくれた。
これじゃあ夜々さんにはモロバレだと思ったけど、在義父さんと違って私、夜々さんには強かった。
お礼を言って一度わかれた。
学校でも逢うし、夕方にも逢えるみたいだ。
家に在義父さんはいなかった。冷蔵庫の中に作って置いたご飯もそのままだ。泊まり込みかな。いつものことなので、書き置きを新しくしてそのままご飯と一緒に置いておく。
着替えを取りに昼間に帰ってくることもあるから。
部屋に戻って、扉を閉めた途端。
「……………………。~~~~~~~~」
きゅう~と空気が抜けるように、ずるずると座り込んだ。
うわーうわーうわ―――っ! なんか……すごいことがたくさんあったような気がするー!
ずっとあった習慣のように、左手を――薬指を、抱きしめる。約束。あかし。結婚の、約束をした。
「………―――」
ぎゅっと、目を瞑った。
カタチになって、現実が目の前に映える。
彩が鮮やかに、穏やかに色づきだす。
一つ二つ、花びらをほころばせる桜のように。
流夜くんは色んなものをくれる。
感情や、涙や、幸せや、言葉や。でも、形あるものとしてもらったものは二つ。
首元に光る桜と月のお守り。自分が傍にいられないときに、と言って。
そして、薬指の約束。なんかこっちは魔除けとか言っていたけど。
お守りは、今の私を護って流夜くんに繋いでくれる。
薬指は、私と流夜くんの未来が寄り添うことを約してくれる。
……言葉では伝えきれない感情ばかり、流夜くんはカタチにしてくれる。
自分も。……流夜くんに、言葉や想いや、形に出来ないものだけでなく。
……いつか、流夜くんが喜ぶ顔を見たいから。考えよう。たくさん。
「……笑満に報告しないと」
幸せが波を引かない。いつまでも満ちたままだ。
電話で一番に、笑満から『おめでとう! 夜々さんはうまく騙せた?』と応答があった。私は苦笑するしかない。