今日も例の如く、華取の家へお邪魔している。

今日は警察署へは行かない。と言っても、それは吹雪が非番だからで、このまま《白》へ行って吹雪降渡と落ち合う予定だ。

最近自分、大分咲桜との仲が安定していることでフヌケになっている気がするので、少し気を引き締めたい。

……と言いつつ、華取の家へ行って、『恋人の咲桜』に逢わずにはいられない。

一度家へ帰ってから《白》へ行くつもりだったので、今日は歩いて来たと言うと、咲桜はじゃあ門までは送る! とついてきた。

人目につかないようにと今までは玄関までにさせていたけど、まあ……可愛く言われて断るのもなんだ。もう外は暗いし。

お隣からの襲撃を案じていたが、最近朝間先生は大人しい。

咲桜を俺たちの側へ連れて行かないという約束が効いているのだろうか。希望的観測。

「気を付けてね。変な足音したら私に電話してね。話してる風装うと犯人も警戒するだろうから」

「わかった。そんときは頼む」

「うんっ」

大きく肯定されて、楽しい気持ちになる。もう夜だからこれから離れると言うのに、咲桜はちっともそんな感じにさせない。

「じゃあな――一応外だから、キスはまた明日」

咲桜の頬を捉えて囁くと、大袈裟でなくびくりとされた。それにまた笑いがもれてしまう。

何回か頭を撫でて、「冷えるから早く戻れよ」と言って離れた。咲桜は手を振って見送る。

……嬉しいけど、本当に風邪ひかれたら嫌だから戻れ、と華取の家の方を指さしてから一度だけ手を振ると、咲桜はこくりと肯いた。

咲桜は満足したように踵を返して――止まった。ぴたりと。心臓まで止まってしまったかのように。