私は一日経って、甘やかな雰囲気を一掃したようにキリッとしていた。いつもの私だったと思う。
一方流夜くんは、まだまだ恋人モードでいたかったようだ。……さっと顔を正面に戻す。
キリッと顔が照れ隠しだというのは、流夜くんはわかっているのだろうか。
流夜くんは色んなことを知っているし、色んなことを見透かしているように感じるけど、結構トンチンカンなことばかり言ったりやったりする。
わかられていないのかな。
……わかってほしいのと、秘密にしておきたい心。乙女心は複雑なのかなあ。
……自分が乙女名乗るのが不遜な気が勝るな。うん。
ずるずるずる。どうしても離れないので(私も本気で追い払おうとは思わないので)生徒を背負った形で料理講習会と相成った。なんだコレ。
昨日用意しておいた残りがあったので、軽くスクランブルエッグとグリーンサラダだけ作った。
朝起きた場所。並んで寝ていた場所。
結局生徒、ずっとずるずるしていた。
「咲桜、今日夕方時間作れるか?」
「今日? うん――と、大丈夫だよ」
「少し行きたいところがあるんだ。華取の家で待っててもらえるか?」
「うん、わかりました」
やたらベタベタしてくる流夜くんに困りつつ、それでもそれが、嬉しい。
――十六歳の誕生日。二十五歳の誕生日。重なる時間、一緒に。