「取りあえず、時間潰してから帰ってくださいね。あ、神宮さんが誘われてたことは咲桜ちゃんに連絡済みですから~」

「あんたほんと何がしたいんですか! 咲桜に知られたくないんじゃないんですか⁉」

「取りあえず、神宮さんを追い詰めたいですねえ~」

「…………」

す、すごい……流夜が追い詰められている……。

「知られてるならさっさと帰ります」

流夜が扉に手をかけたとき、また朝間先生から声が飛んだ。

「今日も警察署へご出勤ですか」

「―――え?」

反応したのは俺で、流夜は足を停めただけだった。

「神宮さんの根本が犯罪学者であることは在義兄さんから聞いて知っていますし、否定する気はありません。実績のほどが在義兄さんを凌駕していることも――認めたくないですが、事実のようですしね」

「……だったら、なんです? 辞めろって言うことではないようですが」

「わかっていらっしゃるんでしょう? わたしの言いたいこととか、なんて」

「知りませんよ。俺は弟じゃないですから」

弟? 流夜の弟……なんだかすごく冷酷そうな気がした。

「じゃあ、弥栄先生もいるのではっきり言っておきますね? 咲桜ちゃんをあなたの側に巻き込まないでください。あなた方の側に、連れて行くんじゃありません。在義兄さんの方針は関係ありません。わたしの意思で、そうお願いします」

「……朝間先生の方針はわかりました。でもそれ、言い方脅しですから」

「そう聞こえました?」

「それ以外聞こえませんでした。それに、」

流夜は冷えた眼差しで振り返った。

「俺もそのつもりです」

そのまま静かに扉を閉めて出て行ってしまった。

「……『咲桜ちゃんが可愛い』以外で、初めて意見が合いました」