「神宮先生!」
本校舎へやってくると、教師仲間から呼びかけられた。
もう生徒は下校しているからか、そこには一年の担任副担任の中でも若手たちが集まっていた。
「お疲れさまです」
「お疲れさまですー。先生、今夜みんなで飲みに行くんですけど一緒にどうですか?」
合コンですか。すぐにわかった。
皆の後ろで慌てている旭葵が何やら手をバタバタさせて教えてくれている。
ただの飲み会じゃない、と。出来るだけ柔らかい笑みを浮かべた。
「すみません、仕事の残りがあるので今日は……」
「とか言って神宮先生、仕事きっかり終えるタイプじゃないですかー。一日くらいだいじょーぶですよ」
愛子みたいな人って多いんだよな……。そんな感想を持った。
うーん、婚約者が待ってるって言っちゃおうかなー、と考えたところで、明るい声に皆の意識が向いた。
「神宮先生、こんなところにいらっしゃったんですか」
げー。嬉しそうな顔をする同僚とは違い、俺は心の中でうめいた。
「……朝間先生」
保健室の天使こと朝間先生だった。
俺にとってはただの天敵。
「あら? 何かお話されてたんですか?」
「あ、はい。朝間先生。みんなでちょっと飲み会をって」
「あら、そうなんですか……どうしましょうか。一年生の松生さんから進路相談受けたんですけど、神宮先生にも聞いてほしいということでお約束してたんですけど……」
「あっ、そうなんですか! 神宮先生、そうならそうと言ってくださいよ。無理に引き止めちゃってすみませんでした」
初耳です。
「松生さん、保健室で待ってますよ。急いでくださいね」
朝間先生が促してくれたから、見送る雰囲気になっていた同僚たちに会釈して続いた。
それを見て旭葵も「笑満のことだったら、一応俺も行ってみます」と断って後を追ってきた。
旭葵が二堂中学校出身の生徒と親しいのは周知のようで、「次は参加してよー」という言葉で送られた。