「あたしからも、お願いします。遙音くんとお付き合いするの、ちゃんとお母さんとお父さんに了承していてもらいたいです」
笑満が先輩の隣に立って、頭を下げていた。
笑満が飛び出すのを止める者は誰もいなかった。
「いいのー? 咲桜。笑満行っちゃったけど」
「いいんじゃない? 笑満の彼氏は遙音先輩なわけだし」
悔しい気持ちはもうない。
二人の永遠(なが)を願うだけだ。
「何言ってるんだ」
憲篤おじさんはため息を吐いた。
「僕らは交際には一つも反対してないよ」
二人は同時に顔をあげた。
その瞳に、どんな生満子さんと憲篤おじさんが映ったんだろう。
「仲良くやりなさい」
「喧嘩しても仲直りすれば、あたしたちから言うことないわ」
笑満と先輩は顔を見合わせた。認めて……もらえた?
「お忙しい中お時間いただき、ありがとうございました」
流夜くんが頭を下げる。
「いいえ。遙音を庇護してくださったのが、神宮先生たちでよかったと思っています。これからも、遙音をよろしくお願いします」
「はい」
「それとその……学者のお仕事の方は他言しない方がよろしいのかしら」
生満子さんに問われて、流夜くんは一度瞼を閉じた。
「出来たら、そうお願いしたいです。今教師を辞めて遙音まで中退されては困りますので」
「……そうですね」
さらりと、反対に釘を刺された感じの生満子さん。
「って言うか笑満、どこから出て来たの?」
「えっ」
今更ながら母に訊かれて、笑満は泡喰った。
こっそり奥の部屋に隠れていたから。
手をわたわたさせていると、すっと隣に誰かが立つ気配がした。
「すみません。お嬢さんも心配だったようで、こちらに呼んでおりました」
まさかの吹雪さんだった。