「………」

「……本業は、学者というわけですか?」

再び憲篤おじさんが問う。

「そうですね」

「では、あなたに――あなた方に出逢っていなかったら、遙音くんは事件に関わるような仕事に興味を持つこともなかったということですね?」

憲篤おじさんから流夜くんに厳しい声が向けられる。

流夜くんは慣れているように動じなかった。

遙音先輩も。一度口を引き結んだ。

「違います」

通る声音は先輩だった。

「興味ではありません」

「……と、言うと?」

「俺に出来ることです。神宮たちが俺にしてくれたことが、自分にも出来るなら、俺はしたい。それであって、興味や好奇心ではないです。でも、神宮たちがいなければこの道へは入らなかったと思います。圧倒的な力で、俺の目の前で三人は事件を解決してくれました。すごく……悔しかったです。これほどの人が、いるのか、と」

「………」

「オト――

「生満子。……一ついいかな?」

言い差した生満子さんを制し、憲篤おじさんはテーブルの上で指を組んだ。

「遙音くんは、学問の世界だと言ったね?」

「はい」

「遙音くんの言う学問とは、机上でのもの?」

「……いえ。神宮たちと同じ、実践です。現場で携わるものです」

「人の死は、怖くない?」

的に一本矢が刺さったような真正面からの痛み。

先輩はそれを受け止めるのだと覚悟したようだ。

「怖いですよ。たぶん、逃げ出したくなると思います」

「………」

「でも、それでもまた戻ると思います。何度辛い目に遭っても。神宮たちと同じ場所に」

それほど、流夜くんたちに憧れてしまったんだ……。