「俺を早いうちに施設に入れてくれたのも、三人でした。申し訳ないことにあんまり合わなかったんですけど――施設を出た後は、ここに置いてもらった期間もあります。……確かに俺は、神宮たちを目指して、その道に進もうと決めました」

「……オト、ちょっと待ってもらってもいい?」

生満子さんは右手を挙げてストップをかけた。

「その……ちょっと色々、訊いてもいいかしら。あまり頭の中で繋がっていないの……」

「はい。なんでも」

流夜くんは肯く。

「神宮先生は……何者なんですか? 高校生から警察に関わっていたって……」

「あまり人に言ったことはありませんが、俺も遙音と似た境遇の生まれなんです。幼い頃家族を亡くして、親戚をたらい回しにされました。そこを引き取ってくれたのが、華取咲桜さんの父親である在義さんの、当時は刑事だった友人でした。自分やあいつらの育ての親の一人です。中学のときに留学しまして、向こうの大学で犯罪学の博士号をとれたので、その後は学者という立場で関わっていました」

「………」

「………」

無言の返事。

「どうして教師をやっているか、という問いでしたら、簡単に言えば遙音を高校へ進学させるためです」

その言葉は初耳なのか、先輩が流夜くんを見た。

「は? 俺? お前探し物あるって言ってたじゃねえか」

「言ったらお前学校辞めるだろ。元々遙音、進学はしないと言っていたんです。就職するとか言って」

「え、そうだったの? 遙音くん」

憲篤おじさんがやっとそこに反応することが出来た。

「まー、はい。大学行きたくなったら高卒認定とればいいし、学校行くより三人に学んだ方が勉強になるってわかってたんで」

「と主張していたので、誰かが教師になれば高校へも行くかなーということです。なので、遙音が卒業したら教師は辞めるつもりでいました」

「………遙音くんのために、自分の進路を変えたのですか?」

憲篤おじさんは、今度は流夜くんに問う。

「変えてはいません。今も交流のある警察署や研究機関はあります。昼は教師をするようになった、というプラスがついただけです」