「――神宮」
「あ?」
「俺も同席させてくれ」
「………」
「お願い、します」
「……どうしてだ?」
私の耳にも、流夜くんの声は冷えて聞こえる。
「お前らが俺の親代わりって立場でいてくれるなら、頼むのは俺からあることも筋だと思う」
「「………」」
流夜くんと降渡さんは同じ顔で黙然としている。先輩は真っ直ぐに二人を見上げる。
私は、これが答えなんだと気づいた。
先輩の進路は、先輩のもの。先輩の人生は先輩が決めるもの。
だから、私や笑満が何をするというわけではなく。
本人の問題なのだと。
本人が動かないと、何も変わらないということ。
降渡さんは言った。「お膳立てはいくらでもする」。その意味。
その思考を肯定するような声が響いた。
「いーんじゃない?」
吹雪さんが妖艶とすら言える微笑を浮かべて店に入って来た。
「遙音がそうしたいんなら、流夜も降渡も反対することないんじゃない?」
最強のお出ましだった。
流夜くんと降渡さんから反論はない。吹雪さんは当然のように微笑む。
「発案者流夜なんだし、がんばってよね」
「……ああ」
「降渡は流夜の足引っ張らないようにね」
「俺に注意することってそこなの?」
「それ以外にあるの?」
「……ないです」
変らぬ表情で言われて、降渡さんがしおしおと引き下がった。つよー。
「じゃー三人は隠れてようね」
はいはーい、と吹雪さんが私たちを押していく。
首を巡らせて流夜くんを見た。
流夜くんは疲れた顔をしていたのを、私が見ているのに気づいてふっと微笑んだ。
ずきっと、した。