「日義、カメラ厳禁だからな。シャッター音でトラブル起こすから」

「えー」

「文句あるなら帰れ」

「やですー。生満子お母さんも憲篤父さんも写真は撮ってるんで別に取る必要ないっすから」

「じゃー咲桜も俺も撮るなよ」

流夜くんが肝心なところを言い渡すと、頼はそっぽを向いてひゅーと口笛っぽいものを鳴らした。誤魔化し方下手だな。私、平坦な瞳。後でまたカメラ没収しないと。

「もうすぐ松生のご両親来るから、一人も奥から出るなよ」

「え……全部、先生が?」

「と、これと吹雪もいる」

これ、と言われた降渡は「おー」と返事した。

「つーか寝ててもいい? ここんとこ徹夜続きでさー」

「お前は何のためにここにいんだよバカ」

あくびを手で隠した降渡さんの頭をはたいた。降渡さんは「えー」と不満の声。

「遙音の進路納得させんなら、先鞭打ってる奴見せりゃ

「黙れ」

あ、たぶん今、斎月のこと言おうとした。

と私は感じたけど、そこはかなり流夜くんの琴線らしくお腹に一発喰らっている降渡さん。ほんと打たれ強い……。

懲りないというか。あ、二発目。そして斎月のこと、徹底して遙音先輩には知られたくないんだな……。

「お、おーけーわかった。ちゃんと待機してマス……」

「そーしててくれ」

降渡さんがいつもの如く折れた。

これでも三人の力関係、吹雪さんが一番上なんだよなあ。

なんなら三つ巴ってればわかりやすいのに。

でもそれだと吹雪さんに克(か)つのが降渡さんになる。……無理目だな。

テキトーなことを考えて気を紛らわせていると、先輩がまた噛み付いた。

「神宮、お前おじさんたちの反応わかってたな?」

「一般的な反応の一つとしては当然考え付くだろ」

「………。そうかよ」

先輩は自責するような顔になった。

「オトー、顔怖いー」

頼がへらへらと言って来た。くそ、こいつの能天気さが羨ましい。