笑満は、先輩が大事。先輩の心中を心配して名乗り出なかったほど。
……大事だから、先輩の意見を尊重したい。
もし必要ないと言われたら――一緒にいると危ない目に遭うから、と言う文句だったら、笑満は押し切って先輩から離れない。
でも先輩が、犯罪学の世界に行くから笑満と一緒にいられない、と言われていたら、笑満の行動は違っただろう。
「じゃ、がんばんなさい」
降渡さんは先輩と笑満の頭に手を載せて、からりと笑った。
前哨戦が終わって、これからが決戦。
私は降渡さんの光を、いつか流夜くんにも見る日が来るのか……少しだけ、握った手に力が入った。
「なんで遙音以外もいんだよ」
げし。
いつの間にかいた流夜くんが、背後から降渡さんの足を蹴っ飛ばした。
「いてー」
「どーだか。咲桜、松生はともかくなんで日義までいるんだ?」
痛いー、と訴える降渡さんを無視して、私を見て来た。え、と……。
「すいません。私の不手際です」
「それで?」
「………」
うう……言葉が武器なお人は容赦がない。
私は謝っただけで流夜くんの求めた『答え』は言っていない。
「……私が、降渡さんに連絡して、流夜くんがどうしようとするのか訊きました。それで、遙音先輩を回収して来たら立ち会っていいよと言われたので、回収してきました。笑満と頼は気づいて私の方に来ちゃったので、置いてこれませんでした」
素直に白状する。と、急に空気が重くなった気がした。
お、怒られる……。なんとなくそんな感じがしてしまって、そろりそろりと上目遣いに見上げた。
流夜くんは降渡さんを睨んでいた。