今じゃないだけで、考えなければならないことだ。
流夜くんがどれほど見せまいとしても、その傍らを願うから。
「―――は、はははっ」
乾いた笑声を出したのは、引いた位置にいた先輩だった。
「ああそうだな雲居くそっお前に教えられるとかほんと腹立つこれならまだ頼に示された方がマシだ――笑満ちゃん」
瞳が、煌めいていた。
星の光一つ得たみたいに。
「は、はい」
「ごめん、こんなザマになって」
「……ううん」
「俺の至らなさだ。ごめん。――俺じゃなくて、笑満ちゃんが選ぶのだったのに」
「あ、あたし……? 選ぶって……」
「うん。もし、一度選んでくれていたら、それに確信を持ってくれたらそれでよかったのに。……うちの親とか知ってる生満子おばさんと憲篤おじさんだったから、揺れてた」
笑満は視線を俯けた。
笑満が決めていた答えに触れる前に閉ざしてしまった両親の手。
笑満はまだ、庇護下なのだ――
「俺はもう家族いないし、もし昔を知ってる人が現れたら笑満ちゃんに迷惑かけると思う。それでも、俺と一緒にいて。絶対、何からも護るから」
真っ直ぐな星の光の瞳を、降渡さんは満足そうに腕を組んで見ている。
ここまで自分たちは掌の上だったのかと悔しい思いをしながら、私は降渡さんの言葉を頭の中で反復させる。
流夜くんの考えの――。
……わかっていたら怒る事一つもないっての! 焦る事だってないわ!
イライラが増しただけだった。
「はい」
そして笑満の答えは、ずっと前から一つだけ。
すっとそよ風でも吹いたように、空気が変わった。
笑満を見ると、嬉しそうな顔で遙音を見ていた。くそ、可愛いな。
「いてほしいって言ってもらえるなら、あたしはどこまでだって一緒にいます」