「咲桜ちゃんは、まだ子供だからかねえ、芯が強いのに鎧(よろ)っているものがスカスカなんだよ。少し叩いたらボロボロ崩れるの。在義さんは芯が強いし、鎧っているのも丈夫だ。龍さんもいる。咲桜ちゃんが在義さんを目指すとかそういうのは置いておいても、りゅうはその部分、補って余りある。けど、こうやって一人で闘うときね? もう少し、捨て身でない方法を学びなね」
「………捨て身でない?」
私は眉を寄せた。
捨て身で闘わなくてどうする。
「そう。咲桜ちゃんの周りには、こうやって咲桜ちゃんが傷つくのイヤな子いるんだから、もっと自分を護りながら闘いなってこと。他人に護られながら闘うなんて、咲桜ちゃんはなんかやでしょ?」
だから、自分で自分を護りなよ。
「………」
啖呵切って返り討ちにされた。
まだ背筋の冷えが収まらない。
降渡さんの本当の瞳を見た気がしたからか。
いつもは優しさで覆われている降渡さんの本質。
本物の雲居降渡。
「―――」
はは。思わず空笑いが浮かぶ。けれど声は音にならず、私の喉奥に消える。
流夜くん以外で初めてドキドキした。
勿論、恋愛なんかじゃない。生命の危機という意味で。
忘れていた。流夜くんや降渡さんが普段、あまりに普通過ぎるから。
その見えない隔絶の壁の向こう、こちらに薄闇をかけて見させないようにしている世界で、三人は―――……
ギリッと唇の端を噛んで、意識が思考の世界に持って行かれそうになるのを止めた。
今は先輩と笑満のことだ。
三人の所業に哀しい気持ちになっているときではない。
みんな辛いだけじゃないか、なんて考えるのは今じゃない。
今じゃない。