「いらっしゃいませー。お、遙音も見つかったねー」
四人を見て、降渡さんは軽快に笑った。
私の後ろに笑満と頼を認めても、大して驚かなかった。「そっかそっかー」と笑うだけだ。
「ちなみに遙音以外がいるって、りゅうは知らないから」
う。私は一瞬詰まった。
「……言わなくても気付きますよね?」
「まね。気配までは消せないからね。でも一応隠れておいてね。休憩部屋も入り口辺りいれば声聞こえるから」
と、カウンターの中から繋がるカーテンの奥を指さした。
「遙音」
落ち込んだ様子の先輩を見て、降渡はにこっと笑った。
「あははー落ちこんでるー」
「………」
からかわれても、先輩は反論も出来なかった。斜め下に見える拳が震えている。
……笑満に逢えるとは、考えていなかったのかもしれない。すきだった子に、もう逢えない。逢うことはない。
――それを呑み込んで、三人に続くことを決めたのだろう。
でなければ反対された時点で笑満を切って捨てているはずだ。
迷っている。……選べないでいる。
笑満と、自分の見ていた未来(さき)とを?
「遙音はそんなすきなんだねー。笑満ちゃんのご両親―」
「……………」
遙音先輩のカオに、悔しそうな力がこもった。
「ははっ」
蒼い顔をする先輩を見て、降渡さんは愉快そうに先輩の頭に手を置いた。
それを聞いて私、ぷちーんときた。
「――降渡さん。そこまで笑われるいわれは遙音先輩にはない」