笑満が頑を張ったら、頼には止められないだろう。
頼は何かを主張するの、自分の欲に添うもの以外は苦手だ。
つまり写真撮らせろと迫る以外は、自分の行動で貫くことはない。
頼の中で、たぶん私と笑満は天秤で釣り合っている。
私の頼みを優先出来なかったし、笑満を無理矢理止めることも出来なかった。
ほんっと、自分を持ちなさいとまた説教しなければ駄目なのかな。
……強すぎる自我の持ち主だとは認めるけど。
「咲桜……」
小走りでやってきた笑満が足を進めて、私の両腕を摑んだ。
その瞳に、まだ姿の見える場所にいる司くんの姿は薄い。
……あんな目立つ人が目に入らないくらい、動揺している。
「あ、あたしの所為で……あたしのために何か、しようとしてるよね? 教えて」
「………」
はじめから、笑満を欺けるなんては思っていない。
一時的に、決戦の場になるところから隔離していよう、って指示があって同意したけど。
「……私が、何か出来るわけじゃないんだ。流夜くんが、降渡さんたちと一緒に生満子さんたち、説得するって」
「え――それって……先生として、………」
じゃない、ということには、笑満もすぐ気づいたようだ。私が出した人物の名前で。
教師と私立探偵が関係あるとは、どう話しても一生徒の進路相談には持って行けない。
まさか、明かす気? 笑満の表情が揺れる。
流夜くんが隠しているものを、私から教えられている笑満からすっと色が消えた。
「……どういう手で話すかは、わからないけど……降渡さんと吹雪さんも呼ばれたって聞いた」
それは、笑満の両親が否定した遙音先輩の進路の先を歩く三人。
「だ、だめだよっ。お父さんたちがバラすとかそういうのはないって思うけど、あたしなんかの所為でそんな大事なこと――
「笑満。違う。今の問題は、遙音先輩。先輩の進路。それで、降渡さんと吹雪さんと――流夜くんは、遙音先輩の親代わりだよ。自分たちでそう認識してる。遙音先輩の導き手としても、今まで遙音先輩が三人の方へ行くことを、否定も拒絶もしなかった」