「……そんなところです。それと、そう改まらないでください。俺は年下もいいとこですし、あなたはさくの兄たる流夜さんの婚約者であられる」

「………」

思考、停止。司さんは提言するも、困った様子は一つもない。顔にも、声にも。

…………………………………。

「年下? って、私がですよね?」

まず簡単に解決出来そうなところから反応出来たけど、実は一番簡単じゃなかったようだ。

「いえ? 俺はさくと同い年です。数えでは十五です」

確か自分、昨日の誕生日で十六になったはずだ。

「数え?」

「はい。生まれ日はまだなので、そちらで考えれば十四です」

「……………………」

日本人て……と言うかアジア系の人って、確か若く見られがちって聞いたことあるんだけど……。

目の前の青年――少年と言える年齢らしい司國陽は、まさか中学生だった。二十代とか思ってたよ。

……怖っ! 斎月といい、今の中学生怖っ! 

驚きに口が動かないでいると、司さん――司くん? が口を開いた。

「さくがあなたのことを――珍しく女性に懐いたようなので、どのような方かといきなり伺ってしまいした。突然のこと、申し訳ありません」

恭(うやうや)しく頭を下げる所作も、どこぞの佳人(かじん)のようだ。男子だけど。中学生感全くない。

「い、いえ――斎月も流夜くんと大変な思いをされたようで……私でよかったら、いくらでも姉になりますから」

自分にも言い聞かせるように、一つ肯きながら言った。

「それはありがたいことです。――もう一分過ぎましたね。蛇足ではありますが、さくと流夜さん、逢ったとき口喧嘩をしませんでしたか?」

「…………」

ものすごい口喧嘩をされていました。龍生さんに頭突きを喰らわせられるくらいの勢いで。