「咲桜の父親は在義さんだけって、そういうことじゃないか?」

咲桜の父親は華取在義で、母親は華取桃子。

事実と現実は、それ。

……流夜くんが揺らがなかったと言ってくれたことは、私の中でも変わらなかった。

「……うん。そうだね。でもその……友人だけど犯人ではない、って、どういうこと?」

流夜くんは刹那顔を厳しくした。

「……少年犯罪、だったんだ。犯人は学友三人。そして美流子を連れ去った四人目も友人であって、遅れて神宮の家にやってきたために、直接――殺しに関してはいないけど、現場を見て、美流子を見つけて、逃げて、逃げ続けて、警察へ向かうこともしなかった。……殺しはしていないけど、犯人の仲間と認識される行動を取っている」

逃げ続けて。

「そう、なんだ……」

そこまで聞いて、私の肩から息が抜けた。そして、流夜くんの頭を包むように腕を伸ばした。

「流夜くん、たくさん頑張ったんだね。……これからは、私がいるからね?」

ずっとずっと、傍にいるからね?

――あなたがゆるしてくれるなら。

流夜くんが小さく唇を噛むのがわかった。

私の血縁のこと、わだかまりはない。わだかまってはいない。

二年前、離れる前に総て溶けてしまった。

だからこうして、寄り添える。寄り添っていることを、幸せだと感じられる。お互いに。

「ありがとう、咲桜」

もう、神宮家事件の当事者は流夜くんだけだ。

私は、県警本部長の一人娘で、流夜くんの――

「事件が動くことで、俺にも影響があることは確かだ」

「うん」

「咲桜にも、とばっちりはいくかもしれない」

「うん」

「でも、悪いけど――少しの間だけ、がんばってほしい」

「うん」