「……先に、言わなくちゃいけないことがある」
「なに?」
リビング、ローソファ。土下座したり泣きついたりした場所。隣り合って座って、流夜くんは私の肩に腕を廻して、私はその胸に頭をあずけていた。
「少し聞き苦しいかもしれないけど……もうすぐ、うちの、神宮の家の事件に動きがある」「え―――」
「犯人が、捕まるんだ。今、警察は裏取りをしている」
犯人、が。
「……流夜くんが二年の間にしてたことって、それ?」
「とは違うんだけど、まあ、少しは関係している」
心臓が、一度だけ大きく鳴った。流夜くんはそれを察してか、私の頭を撫でた。
「詳しい話は、また今度な。落ち着いて話せるときに。ただ、言えるのは、美流子を連れ去ったのはただ一人で、正しくそいつは殺人犯ではない。犯人の友人、という表現は出来るけど。美流子を連れ去ったのは、神宮の家で生き残っていたのは、美流子だけだと思ったかららしい。犯人たちに殺される前に、美流子を逃がして一緒に逃げた。――そしてそいつはもう死んだ」
「……………そう、なんだ……」
「うん。……ごめんな? こんな日に、こんな話……」
「ううん。……その、私こそ、ごめんなさい。今の話を聞いて、なんだろう……あんまり、思うことがない、んだ……。私にとって『美流子さん』は流夜くんのお姉さんって認識だけど、そこまでで、桃子母さんには通じない。その、連れ去ったって人も……全然、心は動かない。……薄情なのかな? だから、ごめん」
「そうじゃないだろ」
私の頬に指をかけて、軽く上向かせた。