それは、私と流夜くん、両方の肯定。

「……うん。生きてください」

一緒に、と口に出かかって、膝の上で手を組んだ。

――最後に言われた流夜くんの言葉は、ずっと引っかかったままだ。

「あの……私は、まだまだって言うか……流夜くんや斎月みたいに考えるのは出来ないよ。……やっぱり、斎月みたいにはなれない。……一緒に、い」

「あんなバカが二人いてたまるか。咲桜だから惚れたんだから。そこ、誤解するなよ?」

いられない? そう訊こうとしたら、流夜くんからすかさず訂正が入った。

いなくなる前の流夜くんは言った。自分の隣にいるには、斎月くらいでないと駄目だと。

「……流夜くん? あの……どうして、迎えに来てくれたの?」

斎月みたいにならなくてはダメなんじゃないの? 流夜くんの答えがわからなくてそう訊いた途端、車が停止した。

気づけば、流夜くんのアパートの駐車場だった。気づいた私は「あ」と声をあげる。

「ここ――」

「咲桜と、ここに帰って来たかった。――初めからわかっていたことだ。俺は咲桜しか愛せない。……愛してる、咲桜。だからこれからも、俺の手を選んでほしい」

繋ぐのも、護るのも、導くのも。

差し出された左手は流夜くんの答え。迷うことなく自分の手を重ねた。

「はい」

今度重ねたら、何があっても離れない。向かう場所があるなら、遅れたってついていく。

「うん」

右手が頬を捉えて、その瞳が近づく。

「ただいま、咲桜」

「おかえりなさい」

もう一生、何があったって離れてなんかやらない。離されたって、繋がってしまうのだもの。どうやってこの縁を断ち切ると? ……誰にも、させない。離されたって、また見つけるから。

「……咲桜、帰ろう」

「………うん」

流夜くんに手を取られて、一度は終わった場所へ、帰った。