「……私?」

渋面を作る。

「俺を理由にしないで、咲桜の意思で、咲桜の命を肯定してもらいたかった。俺が、咲桜が生きていることを願うから、だけじゃなくて」

自分で自分の命を、肯定してもらいたかった。

「……そういう目的だったんだ」

私は、流夜の傍にいたいという自分の目的のために、大学へは行かずに資格をとって仕事に就くことを決めた。

きっかけは流夜くん。目的も流夜くん。

……でもそれは、自分の願いのため。原動力が、流夜くんの傍にいたいから。

それでいい。それが私の生きていたい、生き方だと決めた。

「ああ。そしたら咲桜、ひと月もしないうちにそれ、クリアしちゃうからさ。無意識に、なんだろうけど」

「クリア?」

「進路、見つけたろ。行政書士になるって」

「……理由は流夜くん追いかけるため、だったよ?」

「そこは引っかかったけど、情報源の絆からして降渡のために法曹界(ほうそうかい)に入ったんだ。否定もしにくい」

「……ほんと、クリアでよかったの? 言ったでしょ? 自分を入れて考えるなって」

「言ったな。でも、俺のために、じゃなくて、咲桜が自分のために選んだのなら、何でもよかった。俺の側へ巻き込むなって言われてる、朝間先生に殺される覚悟はある」

「殺されちゃダメだよ⁉ 私も死んじゃうよ⁉」

「……そこは変わらんのか」

「………すみません」

ううー。流夜くんと一緒に生きていたい、が生きる理由になってしまっているのは……否定出来ない。

これじゃあまた――一瞬悩んだけど、流夜くんの反応は違った。

「じゃあ、咲桜に生きていてほしいって俺のためにも、俺も生きるしかないな」