「あの、ね?」
「うん?」
「すき」
「………」
「今も、って言うか三年前からずーっと、すきの一番は流夜くんだから。いなくなっちゃっても、全然変わんなくてむしろ困った。だから、いなくなるんだったら追いかけるために、日本だったらどこにいても仕事が出来る資格も取った。……また、どこか行くの? 今度はつけていくからね」
「……ついていく、ではなく?」
つける、のか? と流夜くんは眉を寄せた。
「だって何も言わずにいなくなっちゃうんでしょ? だったら尾行するしかないじゃん」
流夜くんの隣、心の言葉。ずっとずーっと、何でもいいから話したかった。話さなくてもいいから、こんな近さにいたかった。
私が文句を言うと、流夜くんは軽く笑った。
「その心配はない」
「……まさか斎月みたいに外国に行っちゃうとか?」
斎月は中学を卒業してそのままドイツへ渡った。
生徒として大学に入ったそうだが、やっていることは学ぶではなくむしろ教える方みたいだと降渡さんから聞いた。
「そうじゃなくて。今までは単に研究所に居つかなかったけど、四月からは所にいることにした。もう、咲桜おいていく場所もない。……これからはずっと、ここにいる」
「ほんとっ?」
「ほんと。まあ、咲桜に彼氏出来てたら考えたけど。その心配はいらないみたいだし?」
「当り前でしょう! 何度言わせれば気が済むの!」
「何回だって聞きたいところだな。咲桜、どうして彼氏作らなかった?」
「~~~なんか意地悪度増してない?」
「意地悪じゃない。からかってるだけだ」
「より性質悪いよ! って、さっきから私ばっかり言ってるよね? 流夜くんこそ彼女作らなかったんですか⁉」
憤然と、もう勢いだけで言うと、流夜くんは苦笑した。
「咲桜が、咲桜をゆるせるようになったら、戻るつもりだった」